黒胡椒もお砂糖も
見ている内にまた眠気がとろとろとやってきた。
私は一つ欠伸をして彼の手を握る。
眠りの中で無意識の彼はそれを握り返してくれた。
・・・・あったかーい・・・。ふんわりと優しい気持ちになる。
また眠りに落ちた。
外は春の朝、そのキラキラした光がカーテン越しにホテルの部屋の中に落ちる。
だけど私たちはそのまま二人で夢の中だった。
そして遅くまで寝てしまって会社に欠勤の連絡を入れるのが遅くなり、しかもそれを思い出したのが一緒にご飯を食べている時にかかってきた平林さんからの電話によってだった。
『君達~、お楽しみのところ邪魔して物凄く申し訳ないけど、無断欠勤になってますよ~』
「―――――あ」
高田さんの驚く顔も結構レアだった。
それから急いで各々が電話を入れて、勿論、それぞれの支部長にこってりと叱られた。私は悲しいことに3月のノルマ達成を厳命されるハメになった。
ガッカリして肩を落とす私に、前の席で砂糖もミルクも入れたコーヒーを飲みながら、高田さんは微笑んだ。
「大丈夫、まだ1週間ある。余裕ですよ、あと2件くらい」
・・・そりゃてめえなら簡単だろうよ。
「・・・激励感謝します」
ムカついた私は彼のコーヒーにテーブルにあった七味唐辛子をいれてやったのだった。