黒胡椒もお砂糖も


 私の隣には本日も実に無表情で、でも格好良い高田さんが立っている。

 フラワーシャワーを主役二人に浴びせてその後姿を見ている時、それをじっと見ていた高田さんが私の腕を引っ張った。

 少し後ろに下がり、主役に拍手する客の輪から離れる。

「高田さん?」

 見上げる彼は眩しそうな顔で私を見ている。

「どうしたの、まだ――――――」

 終わってないよ、と言おうとしたところで、珍しく彼が遮る。

「・・・見たいな、と思って」

「うん?」

 少しだけ口元を緩めて、彼は首を傾ける。

 いつもよりキッチリとしたスーツに包まれた肩が私の顔の前に来て、耳元には彼の吐息。

 身を屈めて彼は私の耳元で囁く。

「・・・美香の、ウェディングドレス姿も、見たいな、俺」

 ハッと息をのむ。

 彼は上体を起こして真っ直ぐに立つ。

 そして初めてみる照れた表情で、手を出した。

「行こう」


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