黒胡椒もお砂糖も
うひゃあビックリした!そうだ、この人いたんだった!!ちょっと待って、どこに行ってたの私!?
一人でパニくって苦しんでいたら、高田さんの低くて静かな声がした。
「・・・よく食べましたね」
「ええと・・・はい。こんなにちゃんと食べるの久しぶりで。ずっと無言ですみません・・・」
あなたのこと、完全に無視しちゃってたわ、と思って謝ったのだが、本人は気にしてないようだった。
表情も変えずに店の人を呼び、コーヒーを注文する。
「尾崎さんは?」
「あ、頂きます」
お昼から生中を2杯も飲んでしまった。さすがにコーヒーなしでは恐ろしくて帰社出来ない。
食べたものを見回した。空になった、チキンサラダのボウルとピザのお皿、あとちょっとだけ残っているポテト。トーストも食べたし。あ、でも魚は高田さんが自分の分を食べた後片付けていたんだっけ・・・。それにしても、よく食べたな。
ここ最近の、丸一日分ほどを昼食だけで食べてしまった。美味しかったけど、驚き・・・。
「驚いてるんですか?」
高田さんが話していると気付くのに時間が掛かった。
「へ?」
ついマヌケな声を出したら苦笑された。ハッキリと、苦笑だった。この人の表情が動くのを見たのは初めてかもしれない。
とても美形だが、いつでも無表情なのだ。無愛想だし。苦笑ではあっても、一応笑ったってことで――――――――