黒胡椒もお砂糖も


 ・・・わお。私は驚いたのがバレないように咄嗟に下をむいて両手を見つめた。幼馴染?それってレアな情報なのでは。

「大学で再会して、それ以来一緒にいるんです。・・・腐れ縁で」

 はあ、腐れ縁。それはそれは。

「・・・あ、なら、高田さんも32歳ですか?私平林さんと同じ年らしいんです」

「いや、俺は一つ下です」

 うほ。あらら~・・・やっちまったな、私。ちょっと凹む。自分から年齢をバラしてしまった上に、ヤツは年下だと知ってしまった。

 って、別にいいのよ。

 彼が年下だったら何だっつーの。

 心の中で自分に突っ込んで、これ以上失態をさらして勝手に挙動不審になるまえに撤退することに決めた。

 伝票を見ようと手を出すと、するりとそれはとられてしまう。

「あの・・・」

「ここはいいです」

 瞬きをしながら高田さんを見た。彼はいつもの無表情で、鞄を持って立ち上がっている。

「いえ、あの、自分の食べた分は払いますよ」

 私も言いながら立ち上がると、それはアッサリと聞き流して高田さんはレジへと進む。

 慌ててその背の高い後ろ姿を追いかけた。

 え、ヤダヤダ。付き合ってるとか上司とかなら相手の立場もあるからともかく、同僚で、しかも年下だと知ってしまった後で気軽に奢られるわけには行かないじゃないの!

 いくら稼いでる金額が天と地ほどの差があったって、自分の昼食代くらいは払いたい。こんなことで借りを作りたくなんてないのよ~。


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