黒胡椒もお砂糖も
上司である副支部長や、営業達、そして仕事上一番話す事務の笹田さんにも言われた。
「尾崎さん、最近ちょっと元気そうですよ。顔色もいいし」
って。皆が何故か安心したような顔で、その方がいいですよと口々に言う。
私はそれを驚きを持って見詰め、少しずつね、と自分に言い聞かせたのだった。
少しずつ、私は人生を取り戻していきたい。脇役でも構わないから、地味で地味でいいから、またこの世の中を楽しめるように。また他人との繋がりを求めたくなるように。
ぼーっとしている内に式は閉会式を迎えていた。
これからは各自解散となる。このような大会がある日はもう営業はしないと決めて、気楽に皆でご飯を食べに行く人達も多い。上司連中は大体この後昼食会を経て会議に突入するので、見張りがいないからだ。
羽を伸ばす日、と決めて最初から参加しない人もいる。勿論各事務所の出席率で参加が少なければ上司が怒られるから、それは仮病を使って休むんだろうけど。
私は大体いつでも帰宅していた。そして家事をしたりでダラダラしていたんだった。今日はどうしようかな。
出口に殺到する営業達をまだ座ったままで見詰めながら、うーんと考えていた。
ま、取り合えずトイレでも行くか。
混雑している出口は避けて、そろそろ空きだしたトイレへ向かう。だけど入ってみればまだ順番待ちだったので一番後ろに並んだ。