黒胡椒もお砂糖も


 そう思ったと同時に上から降ってきた高田さんの言葉に、私は仰天する。

「・・・あれ?平林から電話で、ここで待つって言われたんですが・・・」

 はい?

 私は目を瞬いた。

 ここで待つ?そんなわけないでしょ、私と逆方向へ行ったんだから――――――

 脳裏に先ほどの肩を震わせて笑う平林さんがよぎった。

『本当にあいつが言ったんですか、それ?』

 そう言って笑うスーパー営業が。

 ・・・・おい、こら。

 もしかして、平林~!!

 カッと一瞬で顔に血が上った。真っ赤になったのが自分で判った。慌ててそれを隠すために下をむいてマニキュアを手に取る。

「・・・待ち合わせですか。では私は失礼しますね」

 鞄にマニキュアを突っ込もうと後ろを向くと、破けてますよ、と声が聞こえた。恐る恐る振り返ると、高田さんは私のふくらはぎを直視している。

「・・・・はい、知ってます。だから今、応急処置をしてたんですけど」

「終わったんですか?」

「へ?」

 相変わらずの無表情で、彼は淡々と言った。

「貸してください」

 ――――――――はい?

 私はマジマジと後ろに立つ美形を見詰める。何か、聞こえた?え、何を貸してだって?


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