黒胡椒もお砂糖も


「それでは寒いでしょう」

「ほほほほ、放っといてください!」

 何故私が足をあなたに触られなくてはならないのだ!そんな事平常心で、はいそうですか、ありがとねなんて受け入れられるかっつーの!

 ああ、周りに人がいなくて良かった・・・。この真っ赤な顔を他の人に見られなくて済んで良かった。

 多少現実逃避した頭で私はそんなことを考えた。

 するとまだ片膝をカーペットにつけてしゃがんだままの状態で、高田さんが、ふっと小さく笑った。

「緊張してるんですか?」

「しっ・・・してないわよ!」

「真っ赤ですよ」

 うがああ~っ!!!私は思わず両手で頬を叩く。ちょっと神様!?一体何がどうなってんのよー!

 やたらと綺麗な笑顔を見せて、高田さんが目の前で笑っている。

 楽しそうだな、オイ。全くムカつく状況だ。

 落ち着け私。そして現状の把握に努めよう。

 とにかくこれは、あの平林のせいに違いない。何故だか知らないが、あいつは私をからかうためにこの男をここへ寄越したに違いない!

 バッカ野郎~!!!お調子者のお祭り男め~!!

 心の中で平林さんに向かって「道端でこけろ!」と30回は呪いを送り、私は急いで鞄を引っつかむ。

「それ、返してください」

 マニキュアにむかって手を伸ばすとしゅるりと避けられた。

 何と、遊ばれている。

 え、何!?この人一体どういうキャラなわけ!?混乱した私はその仕打ちに口をあんぐりと開ける。

「ちょっと、高田さん?」


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