黒胡椒もお砂糖も
実際に部屋を契約するかは物件にも客にもよるのだし、そこは強制できない。だけれども手数料が半額になったりのメリットがあるのなら、彼等の契約のチャンスは増えるはずだ。
そして、お客さんを不動産屋に紹介すればするほど、自動的に私の仕事のチャンスも増える。
「よしよし、私、冴えてる!」
自分でそう褒めて、気分よくいつもの職域に入って行った。
出入りの場所が増えただけでも営業としては万歳なのだ。これで今年の仕事を終われるのなら、大変宜しい。
機嫌の良かった私は運も自分で引き寄せたらしい。アンケートも貰えたし、見直しを一件承って更にアポも取れた。素晴らしー。今日は上出来じゃない?
「お、尾崎さんちょっと変わったね。いいことがあったの?」
馴染みになっているサラリーマンが歩きながら声をかけていく。私は笑って答えた。
「ダイエット諦めましたー」
あはははと笑って通り過ぎながら、その男性は言った。
「その方がいいよ、健康的で。ご飯はちゃんと食べないとー」
はーい、と叫んで手を振ると、向こうも手を振ってくれた。ダイエットなんかしていないが、病気だったんです、とか、病んでたんですなどと答えるよりはマシだろうと思ったけど当たったみたい。
同じようなことが二つ目の職域でもあった。そこでは女性に、元気そうですね、と言われた。そして話をしたついでにとアンケートをお願いしてみたら、アッサリ書いてくれて驚いた。