黒胡椒もお砂糖も
何となく皆の目が優しい気がした。
やっぱり、そうなのね。私はしみじみと思う。
痩せてギスギスしている女は印象が悪いんだなって。やっぱり多少太っているほうが、愛嬌も出るし可愛くうつるものだ。
別に可愛くなくても構わないが、好印象は営業にとって大切なものだものね。営業活動の為に整形する人だっているくらいなのだ。
そう考えたら笑顔も堅く顔色も悪かったこの1年半、よく契約貰えてたな、私。うーん、ちょうどタイミングが良かったって事例が重なったのだろうな。
でももう証券会社時代にお世話になっていて、転職を伝えたら保険を変えるわと言って下さった有難いお客様は全部刈り取ってしまったのだった。今、自分の状態に気付けてよかった。食べれるようになってよかった。
いい方向だ、そう思った。
「尾崎さん、いい感じじゃなーい!」
私より4つ年上の嵯更副支部長に褒めて貰えた。
先日思いついて飛び込んで出入りの許可を取った不動産屋で、そこで働く新人君の保険の契約を貰えたからだ。
お客様がいていない時間帯を狙って不動産屋でもチラシを配ったりアンケートをお願いしたりしていた。勿論店頭だから、不動産のお客様が来た時点で私は撤退となる。
だけども閑散期の今、不動産屋の営業達は暇を持て余していた。
わお、ラッキー。
やっぱり営業同士だけあって、お互いの利益も考慮して露骨に嫌がられたりはしないのだ。皆笑顔でアンケートを書いてくれる。