黒胡椒もお砂糖も
壁や箪笥の上に飾った好きな小物。離婚してから少し前までは、部屋を装飾しようなんて全然思わなかったな。
そんな余裕なんて全然なかった。食べることさえようやく満足に出来るようになったのだから。
しんみりとしてしまったけど、くしゃみが出て我に返る。
やだやだ、体が冷えて来ちゃったわ。
外に出していた家具も運び入れて何度も確かめながら配置し、掃除の為開け放していた窓をやっとしめて、エアコンのスイッチを入れる。
エアコンもいつも通りの大きい音はしていたけど、掃除のお陰で綺麗な空気が出ているようだった。よしよし。そしてホットカーペット!これの威力は凄いな。部屋全体が簡単に温まってしまった。
「・・・もっと早くやればよかった」
一人の部屋で呟く。
これからは電気代がかかるんだろうな。でも、この明るい気持ちを手に入れられたから、いいや。
そう思って笑った。
いいや、頑張って働こうって。
夜の7時には、外はまた雪が降りだしていた。
だけど私は温かい自分の部屋で一人鍋をして、ビールを飲んでいた。
離婚して実家を出て、こんなに一人で寛いだのは初めてだった。目に入るもの全部が愛おしくて、ちょっとハイだったのだろう。
やっと自分の部屋になった気がしたのだ。
ここは、今日でやっと私の居場所になったんだって。