黒胡椒もお砂糖も
高層ビルの18階のフロアーを占めるうちの保険会社からの窓の眺めが一変していたのだ。
というか、何も見えなかった。雪で。
唖然として口が開いた。
・・・ふ、吹雪いてるし・・・。
うそん!ちょっと待ってよ~!
半泣きで窓に近寄る。外は灰色の世界に変わっていた。いつもは見える向かいの高層ビルの青く光る窓も、下に広がる高速道路や道やビル群が見えなくなっている。
猛吹雪じゃん!くっそう!私は本気でうんざりした。
都会であるここら辺では珍しい大雪。こんな雪が降ると、交通機関は一気にマヒしてしまう。だからこんな日は動かずに、温かい支部にいてコーヒーでも飲みながら来年の計画を立てたり電話でのアポ取りをするほうがいいに決まっている。
なのに、私はおバカな若者の為にこの吹雪の中を外出~!?もう本当に勘弁してよ・・・。
でも約束は約束だ。
しかも約束した堀口さんはお正月に友達といく旅行のお小遣いに、給付金をあてにしているらしい。ブチのめしたいけどまさかそんな事出来ないし、お客様の為ならエンヤコーラー!との心意気で行かねば、我が会社のうたい文句を裏切ることにもなる。
泣く泣く私はコートを着込んだ。
事務所を出るまでに同情に満ちた「行ってらっしゃい」を何度も聞いて、エレベーターホールへ出る。
いつもより営業鞄が重く感じるのは気のせいではないんだろう。・・・・だって、行きたくないんだもん。あーあ。