黒胡椒もお砂糖も


 行く前からぐったりしながらエレベーターに乗ると、あ~そのエレベーター待って待って!と賑やかな声が聞こえてぎょっとする。

 この声は・・・平林!?

 条件反射で思わず私はエレベーターの「閉」のボタンを連打する。閉まれ閉まれ閉まれ~!!!だけど残念ながら少し遅くて、ヤツの長い手が閉じかけたエレベーターのドアをガシっと掴んだ後だった。

 私はボタンから手を離して後ずさる。

 ・・・うぎゃあ(泣)これは・・・もしかして・・・。


 嫌な予感というのは概ね当たるものである。それに、平林さんの横にはなぜかいつでも高田さんがいるのは判っていた。

 そして予想を裏切ることなく、無理やり開けられたエレベーターのドアの向こうには、平林&高田のペアが立っていた。

 ―――――――マジ、勘弁・・・。


「あ、尾崎さんお疲れ様~」

 いつもの愛想の良い笑顔でニコニコと平林さんが乗り込んでくる。その後ろからは当然のように高田さんも。二人とも鞄は持っておらず、スーツにコートだけを羽織っている。

 大きなエレベーターの、出来るだけ隅っこに寄って、私は小声で仕方なく返す。

「・・・お疲れ様です。平林さん、高田さん・・・」

 いつもは色んな人の乗り込むエレベーター、何故今日に限って私だけなのよ~。

 大きな男二人が乗り込んでから無情にも扉は閉まり、エレベーターは下に降り出す。

 また当然のように、平林さんが笑顔で口を開いた。

「凄い雪ですね、今からアポ?」


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