黒胡椒もお砂糖も
ここまで頭の中で一人もんもんと考えた後、私は咳払いをしてゆっくりと口を開いた。
声が震えないように気をつけて。
「あのー、た、高田さん。・・・冗談ですよね?私を、す、好きだっていうの」
鏡越しではなく、高田さんは一度くるりと振り返って、直接私を見た。
「好きですよ、尾崎さんのこと」
ぎゃあ。
「まっ・・・前!前を見てください!前~!!それでもってからかうのはもう止めて下さい!」
私は前方を指差しながら、わたわたと叫ぶ。
すると高田さんはハンドルを切ってブレーキを踏み、車を路肩に停めてしまった。
「――――――」
緊張で黙る私。運転席に座る緊張の元凶は、体ごと振り返って、私を真っ直ぐに見た。綺麗な真顔が私を見ている。頭がくらくらした。今きっと、酸欠状態・・・。
「からかってなんていません。プロポーズしたら信じてくれますか?」
「は!?」
プ、プロ・・・何だって?!ザアッと血の気が引いたのが判った。
「何言ってるか判ってるんですか!?」
今度は真っ青になった私を相変わらずじっと見詰めながら、無口の美形は頷く。
「わっ・・・わ、わ、私は、バツ1なんですよ。平林さんから聞いてないですか?」
「知ってますよ」
「とととと年上だし!」
「一つだけね」
「営業としても女としてもパッとしないし!」
「・・・そして自信もない、ですね」