黒胡椒もお砂糖も


 彼女はキラキラの笑顔で、はい、と頷いた。

「旧姓は水野と言います!ずっとこの支社で事務してます。2年前に結婚して、大嶺に変わったんです」

「ダンナ様はやっぱりこの会社の人ですか?」

「あ、いえいえ、コンパで知り合った商社マンですよ。うちの支社で是非イケメンエリートを捕まえたかったんですけど、無理でしたね~はははは」

 あっけらかんと笑う彼女に好感を持つ。ストレートな人だな。これだけ自分の思いを真っ直ぐ言えたらいいだろうなあ~。

 話が途中だからと廊下でそのまま立ち話をする。

 大嶺さんは誇らしげな顔をしてこう言った。

「あ、でもね、私の事務仲間が、あの北の楠本と結婚したんですよ!凄いと思いません?知ってますよね?北支社の名物イケメン、楠本さん!」

「あ、はい」

 私はつい苦笑する。生きた伝説の楠本FP、まだ実際に話したことはないが、確かにかなりの男前ではある。

 その人を捕まえたのだと友達である彼女が威張るのが面白かった。

「同期の方ですか?」

 大して興味はなかったけど、聞いて欲しそうな顔をしていたので聞くと、いえいえと首を振った。

「最初にアルバイトで入ってきた北事務所の事務なんですけど、かーなり消極的で初心な子だったから、楠本さんと付き合っているって聞いた時にはほんと驚きました!どうやって彼を捕まえたの~!?って」

 いかに皆が驚いたかを詳細に話す彼女を見ていた。・・・3大イケメンと付き合うと、これだけ噂になるんだ、ということがよく判りました。


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