黒胡椒もお砂糖も
2、痛い記憶
鏡の中には私がうつっている。
無表情で、目の下にはクマがあり、肌にはぽつぽつとシミ。肌は水分を失って、口元の皺が前より少し深くなったようだった。
セミロングの黒髪。奥二重の瞳は左右で少し大きさが違うし、実は色も違う。それはカナダ人の祖父の隔世遺伝で、なのだが、後は完全にアジア系の顔立ちなので片目のブルー掛かった瞳は悪目立ちするだけだった。遺伝というのは不思議だ。どうせなら両目が同じ色なら良かったのに、片目だけが色が薄い。だから普段はカラーコンタクトで黒くしている。
最大にして一度だけ来た人生のモテ期は21歳の頃で、その頃は「美人だ」とか「可愛い」などと言ってもらえたものだけど、それも23歳過ぎたら聞かなくなった、程度の顔立ち。
167センチ、体重は平均より低く、元から痩せ型。電信柱のようだ、と自分では情けなく思っている。元々胸もお尻も自慢できるほどはなかったけど、離婚のバタバタで激痩せをしてしまってからは本当に電信柱みたいになってしまった。
離婚前から食欲が失せ、以来食べ物に興味が持てなくなって、取り合えずの生命維持活動だけの為に食べている状態だ。当然の結果といえば、それまでの体。
「・・・・顔色、悪すぎでしょ・・・」
吹き出物がないのはそれだけの栄養分が体にないからだろうな~とぼんやり思う。
32歳には見えないぞ。自分に突っ込んだ。そして色のない唇に赤いグロスをのせる。そうでもしないと死人のようだ。