オフィスの野獣と巻き込まれOL
人は見かけが大切だ
濃紺のダボっとしたスーツ。ワイシャツは真っ白で清潔だけど。
濃いブルーのネクタイは、悪くないんだけど地味。
髪型は最悪。
左右にきっちり七三に分けて、ヘアクリームか何かでぺったりと固定されている。
この髪型なら、たとえ外が暴風雨になっても、傘なしで一糸乱れず歩いていける。
この男性、お世辞にも洗練されているとは言いがたい。
気まずい雰囲気を紛らわすために、無理やり微笑む。
私、成田美穂は、目の前の男が食事をする様子を観察していた。
第一印象は、経理マンらしい真面目なサラリーマンそのもの。
その真面目なサラリーマンの彼が、さっきから無表情に私を見ている。
微笑みかけたのに、にこりともしない。
私、人の相手をいするのは、得意なんだけどな。
笑顔をみせるのに、こんなに苦労したことはない。
いつもなら、人を見れば自然に笑顔になる。
でも、今日は勝手が違う。
私は無理やり笑顔を作って、彼に微笑みかける。
彼の名は堀川祐一。
会社の同僚。彼は、経理部で働いている。