オフィスの野獣と巻き込まれOL
彼が気に入ってくれてるのは、どんだけ仕事とは全く別のことだと、分かってくれてるのだろうか?
「無理よ。絶対いや」
こんなこと、引き受けられるか。
絶対拒否するから。私は、義彦君を睨みつける。
義彦君は、私のことなんか無視して、しれっと言う。
「でも、もう。人事発表しちゃうんだよね。
4月の人事異動で、君は、なんと、堀川君の部下になる」
こんなこと、私の承諾なしにしたって言うの?
開いた口が塞がらない。
「義彦君、彼が、何の仕事してるのか分かってる?」
「経理だよ。そのくらい知っているぞ」彼は、私を驚かすことが出来て嬉しそうだ。
「私が経理に行ってどうするのよ」
「君が気にするのは、堀川君だけでいい。ただ彼のことだけ気にするんだ。
彼が何を食べて、何を考えて、誰に会うのか。
君は、彼が行くところについて行くんだ。どこでもだよ。
彼の近くにいて、彼の吐き出す空気を吸って、彼の仕事を見張っててほしい」
「だから義彦君。
いくら近くで見ても、私では彼の仕事の意味が分からないって言ってるじゃないの」
「大丈夫だ。
君と仲の良い、同期の山科君も、君と一緒に働いてもらうから。
彼なら、ちゃんと説明してくれるだろう」