オフィスの野獣と巻き込まれOL
結局、その日は遅くまで資料をまとめ、作業に一日かかった。
さらに、この資料を東京に持って帰って、突き詰めなければならない。
「ダメ。もう限界」山科君が先に音を上げた。
「目が疲れて、二重に見えます」橋本さんも、疲れて目頭を押さえてる。
「このくらいで、良しとするか」
「成田も、もういいだろう」
課長からお許しが出たので、私はゆっくりと体を伸ばす。
「豪華に、近江牛でも……」
「いや、疲れすぎてて、これからうまい肉を食べる元気ない」
山科君が橋本さんに言った。
「どうする?」課長が私に聞いてきた。
「ここは、ほんの少しの料理と美味しいお酒かな」
「分かりました。ご案内します」
駅の方に近い、こじんまりしたお店にはいた。
橋本さんは、店の人とも知り合いらしい。
ゆったりした、お座席に座った。
疲れていたのか、会話も途切れがちだった。
誰かが、否定的な事を言うと、「そんなことない」と課長がとりなした。
こういう時ほど、ワイシャツをまくり上げたこの人が頼もしく見えた。
私たちは、言葉少なに食事を終え、宿を取った近くのビジネスホテルに帰った。
橋本さんの案内だったし、お店の人も、折角美味しいそうな料理を並べてくれたのに。
食事を味わっているどころではなかった。