オフィスの野獣と巻き込まれOL
彼って、年いくつだろう。
課長って聞いてるけど。結構若いかも。
肌の感じからすると、20代後半から30代前半。
社内中尋ねて回ったけど。どういう訳か、誰も彼の年齢を知る人はいなかった。
それにしても、あの髪どうなんだろう。不自然。
あそこまで手を入れる必要があるとすれば、人工物かも。
まさか。
30代でカツラとか。マジか?
もしそうなら、かわいそうに。
人に対して、こうして疑心暗鬼になるのも無理はない。
無口で軽々しく口をきかないのもそのせいかも。
私は、彼のことを慈悲の目で見つめる。
しばらく、観音様のように微笑んでみたけど。
まるでダメ。反応なし。
彼の態度は一貫していた。
目の前の女が、笑いかけようが、冗談を言おうが、気にしないらしい。
多分彼は、私が目の前で椅子から落ちるようなことがあっても、無表情でいるだろう。
いけない。間が持たなくて、つい笑ってしてしまう。
私は、少しだけ視線を上にする。
うーん。
30代で諦めるのは、まだ早いと思うけどなあ。
髪の量は十分だし、黒々してるし。
髪に何か塗りたくって、頭全体がヘルメット被ったみたい固定されてる。
叩いたら、コンコンって音がしそうだ。
健康的な髪を窒息させようとしてる。
昔なら、眼鏡に七三分けっていう男性もいたけど。
平成も終わりに近づいている、今日この頃。
街を歩いてたって、この髪型を、50代以下で見つけるのは難しい。