オフィスの野獣と巻き込まれOL

彼って、年いくつだろう。

課長って聞いてるけど。結構若いかも。

肌の感じからすると、20代後半から30代前半。

社内中尋ねて回ったけど。どういう訳か、誰も彼の年齢を知る人はいなかった。


それにしても、あの髪どうなんだろう。不自然。

あそこまで手を入れる必要があるとすれば、人工物かも。

まさか。

30代でカツラとか。マジか?

もしそうなら、かわいそうに。

人に対して、こうして疑心暗鬼になるのも無理はない。

無口で軽々しく口をきかないのもそのせいかも。

私は、彼のことを慈悲の目で見つめる。


しばらく、観音様のように微笑んでみたけど。

まるでダメ。反応なし。

彼の態度は一貫していた。

目の前の女が、笑いかけようが、冗談を言おうが、気にしないらしい。


多分彼は、私が目の前で椅子から落ちるようなことがあっても、無表情でいるだろう。

いけない。間が持たなくて、つい笑ってしてしまう。


私は、少しだけ視線を上にする。

うーん。

30代で諦めるのは、まだ早いと思うけどなあ。

髪の量は十分だし、黒々してるし。

髪に何か塗りたくって、頭全体がヘルメット被ったみたい固定されてる。

叩いたら、コンコンって音がしそうだ。

健康的な髪を窒息させようとしてる。


昔なら、眼鏡に七三分けっていう男性もいたけど。

平成も終わりに近づいている、今日この頃。

街を歩いてたって、この髪型を、50代以下で見つけるのは難しい。

< 2 / 349 >

この作品をシェア

pagetop