オフィスの野獣と巻き込まれOL

京都駅から奈良駅まで約40分ほど。
電車はあっという間に着いた。

降りますよと言うと、

「美帆、もう降りるのか?」
と課長は、目を丸くした。

「ええ、そうよ」

「もう奈良についたのか!」

ホームに降りたところで、課長が、体を引き寄せてハグしてくる。

「うかつだった。大仏さんは、京都にいると思っていたよ。うかつだった」

「そうですよ。課長、市内を循環する路線バスが出てますからそれに乗って……」

厚い胸板に押し付けられて、息もできない。

「美帆…………」

きつく抱きしめられて、くらくらする。

私を窒息させるために、わざとやってるらしい。

「美帆、この辺りの土地に詳しくないからと言って、騙すとは何事だ」

「騙される方が悪いのよ」
笑いながら言う。
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