オフィスの野獣と巻き込まれOL
ターミナルからバスに乗っても、私たちは外国人のカップルみたいに、いちゃついてキスをした。

課長は、私を大胆に引き寄せ、人目をはばからず人前で顔を近づけてくる。

さすがに、外国暮らしが長いだけある。

こういうことは、平気なのだろう。

大仏殿の前でバスを降りると、参道が見えて来た。

左側にはお土産物店が並び、鹿たちがお出迎えしてくれた。

「何かいるぞ」観光客の合間を、のびのびと鹿が闊歩する。


「国指定の天然記念物ですからね。追っ払っちゃいけませんよ」

課長は、私の後ろに回り鹿たちから逃れようとしている。

私は、土産物屋でせんべいを買って、出迎えてくれている鹿たちによく見えるように、アピールした。

わらわらと鹿たちが寄ってくる。

「信じられない、囲まれたぞ」私は、課長にせんべいを半分分けた。

ことのほか気に入ったみたいだ。

鹿たちを手なずけて、えさを与えている。

「あまり焦らすと鹿もイラついて怒りますよ」

私は、さっさとえさを与えて、鹿に餌はもうないとアピールする。

私のところに居た鹿も、課長の周りに群がった。

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