オフィスの野獣と巻き込まれOL
想いが届くなら

頭の中が混乱してる。

走り出したのはいいけど。

どこに向かって走ればいいのか、それさえわかっていない。

まずは、自分のしたことをひとつずつ、考えてみる。

義彦君から受け取ったデーターを、堀川課長に渡したことは後悔してない。

そうしないと、彼は証拠を揃えられなかったんだから。

私がデーターを渡さなければ、彼の努力が報われず、立場を危うくしていただろう。

あの人は、ピンチになっていたかもしれない。

だから、私のしたことは間違っていない。


問題は……

データーさえ手に入れてしまえば、

課長は、私のことが必要なくなるってことだ。

私は、十分彼の役には立ったけど。

その後のこと。

これからも必要だとは思ってくれないだろう。


義彦専務も役員を外れるし、彼の邪魔になるような役員は、全部排除できたのだ。

私を利用して、他の役員から情報を引き出す必要はないのだ。

そうなると、私の利用価値はない。

まったく。

どうしてこのくらいのこと、分からなかったんだろう。

せめて一歩先のことくらい、考えつかないのかな。

どうして、こんなに抜けてるんだろう。

自分がどういう立場に立たされるかってことまで、考えが及ばない。

いま一歩詰めが甘いのだ。

義彦君は、そういう私の性格をよくわかってる。

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