オフィスの野獣と巻き込まれOL

さらに文句を言うと、そのスーツ。

ジャケットどうしちゃったの?洋服と肩がまるで合っていない。

野暮ったく、スーツに着られてしまっているみたい。


一回り大きいサイズ買っちゃったのかな。

子どもならわかるよ。大きくなるもんね。

まるで、子供店長みたい。

やだな。思わず笑みがこぼれる。


子供店長、スープは美味しいですか?

なんてね。

大き目の服にしても、子供なら日々成長するから意味があるけど。

どう見ても、30過ぎるんでしょう?

この期に及んでも、成長を期待してるわけ?

今後の成長を望んでるなら、早く諦めた方がいい。っていうか、その身長で十分じゃない?

並んで立った時に、私より頭一つ高かったじゃないの。


それに。

ズボンのすそ裾、引きずっちゃってるのは、わざとかな?

スーツの量販店に行けば、いくらでも安くていいスーツがあるのに。



私は、目の前の男性から視線をそらした。

目の前の彼に気付かれないように、ほんの小さくため息をつく。


せっかく、こんな素敵なレストランで食事ができるというのに。

どうしてこんな、いけてない男と食事してるんだろう。

数十秒、窓の景色を見ても結局、間が持たなくて仕方なく男に視線を戻す。

さっきからその繰り返し。


やっぱり、変だよなあ。この人。


極めつけが、このメガネ。

大きすぎる。トンボのメガネみたい。


きちっとした性格なのは分かる。姿勢だけはいいもの。

今、彼は、背筋をピンと伸ばし、ポタージュスープを器用にすすっている。
< 3 / 349 >

この作品をシェア

pagetop