オフィスの野獣と巻き込まれOL

私が、彼を店に連れて行ったのは、気まぐれからだった。

お店の近くまで来たから、立ち寄っただけ。

こんな偶然が重なるなんて。

何か深い訳があって、連れて言った訳ではない。

そたまたま連れて行った男性が、淑子ママの息子だったなんて。


ママは手慣れた様子で水割りを作り、どうぞと勧めてくれる。

「それで?何があったの?」

淑子ママは、マドラーでかき混ぜながら手にしたグラスに視線を落とす。

こうしてさりげなく下を向く。

作業していて、聞いてない風を装うのだ。

ゆっくりマドラーを動かすママに、課長とのことを全部話すことができた。


ママは、他に気を取られてる振りをして、私の話を聞いてくれる。

真っすぐ目を見られるよりも、こうする方が話がしやすいのだ。

私も、ママを見習って大事な事を聞くときは、視線をそらす。

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