オフィスの野獣と巻き込まれOL
二人の母
それからは、毎日がとても慌ただしく、引っ越して住む環境も変わってしまった。
綿貫家での生活は、驚くことばかりでついていくのが大変だった。
届いた荷物は、与えられた部屋に運び込まれ、そこから必要なものを取り出していく。
武子夫人から、徐々にやればいいといわれ、時間が空いた時に整理している。
祐一さんとは、将来の話をしないまま、綿貫家で一緒に暮らすことになった。
なにか、大きな力が働いているみたいに、自然に事が運んでいく。
不思議な気分で毎日を送っていた。
というわけで、私は、祐一さんが支度を終えると、着替えをしてダイニングルームに降りて行く。
「お、お早うございます」
私は、すでに食事を終えている武子夫人に向かって深々と頭を下げる。
「お早う。朝からそんなに頭を下げなくていいのよ」
何と言ってよいのか。
武子夫人は、どこにいても女主人の風格を漂わせている。
醸し出すオーラが違い過ぎる。
「申し訳ありません。遅くなってしまって」
武子夫人は、まだ暗いうちに活動を始めるので、彼女より朝早く起きるのは、無理だとあきらめた。
そして。
同じ家に住んでいるのだが、せめて武子夫人の前でお化粧はした方がいのかどうなのか迷っていたら、遅くなってしまった。
祐一さんに聞いても、「どっちでも可愛いよ。好きにすれば」なんて言うし。
真剣に聞いてるのに。ちゃんとアドバイスしてくれない。
私は苦労しながら、お化粧したように見えないメイクをする。