オフィスの野獣と巻き込まれOL

弄ばれたっていうのかな。こういうの。

私、あいつに弄ばれたんだ。

自分だけは、こんな目にあうなんて思ってなかったのに。

何て、人を見る目が無くて、浅はかなんだろう。


泣くのは止めよう。もう、こんなのに引っかからない。

あの男に対する未練はさっぱり捨てる。

そうしないと、何もかも流されて自分までなくしてしまう。


キモが用意した朝食は、たっぷり食べることにした。

少しでも、お金を払わせたらいい。

彼にしてみれば、大したことじゃないのは分かってるけど。

何もしないよりはいい。




家に帰って、事前に調べたファイルを再読する。

今度は、冷静な目で。

二度と、キモに惑わされないように。 


堀川祐一。

キモの写真、正面から撮った写真だ。

証明写真のように、無表情で真っすぐ見つめている。


経理部の担当課長。

一応、役職にはついているけれど部下はいない。

彼一人、離れ小島で、ポツンと窓際に座っている。

普通に考えたら、こんな男に、いいようにあしらわれるなんてあり得ないのに。


私が所属する総務部と経理部は、同じ管理部にあって、フロアも同じだ。

大きなフロアで、直接彼の姿が見えるわけではない。

不思議だった。

こんなに近くで一年も仕事をしながら、私は、この男の事を気持ちのいくらい覚えていない。


逆にこの男が、目立つ格好をしていたら、印象に残っただろうか?

昨日みたいに、本性むきだしにしてたら?

< 42 / 349 >

この作品をシェア

pagetop