オフィスの野獣と巻き込まれOL
弄ばれたっていうのかな。こういうの。
私、あいつに弄ばれたんだ。
自分だけは、こんな目にあうなんて思ってなかったのに。
何て、人を見る目が無くて、浅はかなんだろう。
泣くのは止めよう。もう、こんなのに引っかからない。
あの男に対する未練はさっぱり捨てる。
そうしないと、何もかも流されて自分までなくしてしまう。
キモが用意した朝食は、たっぷり食べることにした。
少しでも、お金を払わせたらいい。
彼にしてみれば、大したことじゃないのは分かってるけど。
何もしないよりはいい。
家に帰って、事前に調べたファイルを再読する。
今度は、冷静な目で。
二度と、キモに惑わされないように。
堀川祐一。
キモの写真、正面から撮った写真だ。
証明写真のように、無表情で真っすぐ見つめている。
経理部の担当課長。
一応、役職にはついているけれど部下はいない。
彼一人、離れ小島で、ポツンと窓際に座っている。
普通に考えたら、こんな男に、いいようにあしらわれるなんてあり得ないのに。
私が所属する総務部と経理部は、同じ管理部にあって、フロアも同じだ。
大きなフロアで、直接彼の姿が見えるわけではない。
不思議だった。
こんなに近くで一年も仕事をしながら、私は、この男の事を気持ちのいくらい覚えていない。
逆にこの男が、目立つ格好をしていたら、印象に残っただろうか?
昨日みたいに、本性むきだしにしてたら?