オフィスの野獣と巻き込まれOL
山科君の表情がさらに険しくなった。
「くしゃみ出ちゃった。風邪かな?」私は、山科君に白々しく言う。
誤魔化されてくれないと思うけど。
一応、カモフラージュしてみる。
「本当に、大丈夫なの?」
亜美は理由なんかより、私が悲しんでいることを心配してくれてる。
私の鼻水と涙でぐじゃぐじゃになった顔を、どうにかしようとして背中をさすってくれてる。
山科君は、反応なし。
押し黙って、腕組みしたまま難しい顔をしている。
見逃してくれる気はなさそうだ。
めんどくさい男だ。
めんどくさいけど、こういうところは友達思いなのだ。
山科君は、何も考えないで行動する猪突猛進の私に、いつもブレーキをかけてくれる兄のような存在だった。