何センチ‥?
思い出
「ねぇ、遅れちゃうよ。」
『大丈夫だよ、ラスト一本。‥‥』
トン‥‥
網のついた丸い穴。
おっきくて、ジャンプしても手がとどかないゴール。
「あっ‥‥」
「『入った』」
目の前にいる君は、大きくガッツポーズ。
「しゅんっ!すごいよ。」
私は自分のことみたいにうれしかった。
『おおげさだよ‥、亜起は。ほら、学校行くよ。』
照れ屋な君は、どこか遠くを見て言ったんだ。
バスケットボールを抱いて、私の手を掴んで走るんだ。
毎朝、小学校までの通学路を。
両手いっぱいなのに、
『亜起?手提げ持とうか?』
って心配してくれる。
「ううん。亜起持てる。」
私は、いつも君に心配かけてたね。
「しゅん?」
『何?』
「しゅんは、バスケットボール選手になるんだよね?」
いつもどこでも、私は突然だから、君のことは困らせてばっかり。
だけど、君はちゃんと答えてくれるんだ。真っ直ぐ私を見て、
『もちろん!』
って。とびっきりの笑顔で。