何センチ‥?
『亜起‥。実はね、パパがこうなった時のことで、前から決まってたことがあるの。亜起ね‥、転校しないといけないの。パパの会社の本社のあるところに、引っ越さないといけないの。』
いつも笑顔のママが、真剣だった。ママの顔で、良い話か悪い話かなんてすぐわかったの。だけど、

「てん‥こう?」
初めて聞いた言葉みたいに、頭の中を駆け巡った。今まで、友達を送り出したことはあったけれど、自分に回ってくるなんて考えたこともなかったから。

「ママ?それは、遠い所?」

目の前の話を、必死に理解しようとした。引越しても、車で会える距離なら大丈夫。その時の私の頭の中は、駿と離れてしまうということが、他の何より辛い現実だった。だけど、甘かったみたい。

『そうねぇ‥、旅行なら新幹線で行くようなところだから、遠い所ね。』

そう言うと、ママは
『お友達にさよならしないといけないね。ママから学校に連絡入れておくから。それから‥、夕方駿ちゃんのお家行こうね。』

駿‥

私は、涙も言葉も何もでなかった。ただ、呆然と立ちつくしていた。
もう駿とは、会えなくなる。
一緒に学校に行けなくなる。

笑顔が見れなくなる‥。

だけどそう思った瞬間、急に涙が出てきたの。大きな声を出して泣いたら、もっと楽になれたかもしれない。でも、心の中が空っぽで、あの時の私はそれがいっぱいいっぱいだった。



その日の夜、ママと私は駿の家に行った。
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