キスシリーズ~はぐらかしキス~ 短編
そして智晴に手をとられながらついた場所は…。
「音楽室?」
「ここなら誰も来ないでしょ」
こないでしょって…。
それは来ないだろうけど…。
「智晴音楽室の鍵なんか持ってるの?」
「持ってるわけないじゃん。ていうか、音楽室いつも鍵開けっ放しだし」
「うそっ!?」
「本当」
そう言って智晴は音楽室の扉を開けた。
不用心にも程がある気がする…。
まぁ、学校だしいいのかな?
それより、なんで音楽室なんだろう?
「美月…」
「な、何?智晴…」
どうしたんだろう?
2人きりになりたかったのかな?
ま…まさかっ!
「智晴!わ、わたしダメなとこちゃんと直すから、大きな声で名前呼んだりもしない…!だ、だから…「何言ってるの?」
智晴の言葉で最後まで言えずに終わる。
ていうか、"何言ってるの"って…。
「別れるって話じゃないの?」
半泣きになりながら言葉を紡ぐわたし。
てっきり別れ話かと思ったけど違うのかな?
「色々ぶっ飛びすぎ。なんで別れ話になるの?」
ふっと笑顔を見せた智晴にほっとしたのか、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。
よ、よかった…。
「わ、別れ話だったらどうしようかと思った…」
両手で涙を拭いながらそう告げると、智晴はそっとわたしに近付いて人差し指でわたしの涙を拭ってくれた。