可愛い人。
……これって、
夢…なのかな……!?
両手で両頬を思いっきりつねってみる…!
い、痛い……。
ということは、夢じゃないっ!??
「野呂さん、どうしたの!?やっぱり嫌だった!?」
「やばい!!野呂さんってけっこうデンジャラスな生き物じゃんっ!!!ちょっとだけ親近感湧いたし!!ね、江梨子!」
「もう、塩ちゃんっ!そんなこと言ってる場合じゃないでしょっ!」
「とにかく椅子持ってきていい?立ってるの疲れちゃったしさー。」
「ごめんね、野呂さん!塩ちゃん悪気があるわけじゃなくて、誰にでもああなの。言い方きついかもしれないけど、気にしなくていいから!」
「つーかさ、さっきの体育の時間、すんごく腹立ったんだけど!!だからめちゃくちゃお腹空いてるし!」
「そして塩ちゃんは空腹だと機嫌悪くなるけど満たされると直るから、安心してね!」
「江梨子!!それアタシに対する嫌味なわけっ!?」
そんな賑やかな声が私のお弁当をより一層色鮮やかにしてくれて…。
こんなにも心に沁みたことはあまり無くて……。
「あの……、あり…がとう……ございま…す。」
いつものように俯きながら、か細い声でそう二人にお礼を言った。
でもこの日だけはポタポタと堪えられないものが、頬を伝わらず、
ギュッと握りしめた手の甲へとひっそりと降り注いだのだった。