可愛い人。
だ、駄目だ……!
ちょっと落ち着こう。
「はぁ~……。」
思わずため息をつくと私はそのまま机に突っ伏してしまう。
私は茜色に染まる教室を眺めていると、今日あったことが走馬灯のように思い出された。
でも、ある一部のシーンばかりが浮かんでは消えていく……。
『山崎って、ああ見えてしっかり本命いるみたいよ。』
『アイツ、マジで好きな女いるんじゃん!!』
「……?」
なんで?
なんでこんなことばかり考えちゃうんだろう……?
そんな疑問と同時に、今度はキュッと胸が締め付けられるほどの切なさが湧いてくる……。
訳の分からない胸の痛みに私は眉をひそめると、自分の中へ閉じこもるように教室の映像を遮断するため、そのまま目を閉じた…。
その日の夕方は珍しく涼しい風が教室を吹き抜けていき、私の頬も撫でていく。
その心地よさに次第に意識がまどろんでいって、気がつくと眠りについてしまった。
それからどのくらいの時間が経ったのだろう…。
夢と現実の間(はざま)にいた意識がふと教室の世界へと帰ってきた。
………………。
……ん?
なんだろう…この音…。
誰かが……何かに書いてる…音……?
いつの間にか風は止んでしまったのか、静寂な中、ペンを走り書きする音だけが私の耳に届く…。
……え。
ということは、誰かが側にいるってこと…?