可愛い人。
茜色
「…………。」
「…………。」
夕暮れの中、教室には二人だけの影が落ち、沈黙が続いていた。
私が少しの間、うたた寝をしてしまったせいで山崎くんが日誌をつけてくれていて、
そして私がタイミング悪く起きてしまったことにより、結局山崎くんが私と残ることになってしまったのだ……。
流れで残ることになったとはいえ申し訳なさでいっぱいになる反面、
山崎くんと二人きりというあり得ないシチュエーションに心臓が早鐘を打っている!
山崎くんが代わりに日誌を書いてくれているけど、
ずっと黙ってるから、
へ、変に緊張しちゃう…!!
さらさらとペンを動かしている山崎くんはあれからこっちを見ないで、ただ視線は日誌に向けている。
だけど肘をついているからか、私の机から離れることはなく、大きな背中を丸めていた。
対して私はあまりにも近すぎる山崎くんを凝視できず、
両手は膝の上で、ピシッと姿勢を正しては山崎くんの書いていく文字をただひたすら見ているしかなかった…。
『俺は嫌い。タイプじゃないし、むしろ苦手。』
山崎くんを見ているとやはり嫌でも思い出してしまう。
あの言葉が心に突き刺さってからの私は、山崎くんをかなり警戒するようになった…。
山崎くんは入学当初から男女問わず人気があって、初対面の同級生に対してもフレンドリーに接している方だと思う。