可愛い人。


目の前には長い睫毛に、綺麗な黒髪。



揺れるピアスに、香水のほのかな匂い。




背中に回される大きな手と私を軽々と支えてしまう力強さと、どんなに危険なことがあっても安心感を抱ける温かさ。





「んっ!」



「…………。」



「ッ…ふっ…!」



「…………。」



「―――ッ!!」




そして柔らかいソレが私の口をいま塞いでいる…!!





「や、やまざ…き…くッ!!」



「…………。」




息が苦しくて、離してほしいのに山崎くんはなかなかキスを止めてくれないっ!!



彼の強い想いを私自身にぶつけられているような、そんな錯覚をおぼえた。





やがて山崎くんは静かに唇を離すと、私をぎゅっと自分の胸へと抱きしめた!




「あの!……は、離し、」



「やだ。離さない。」



「―――っ。」



「一度タガが外れたから、もう我慢しねぇよ…!」



「っ!?」



「俺、野呂のことがスゲー好き!昨日キスした時点で言おうと思ってた。」



「――!!!」




「俺にとっては野呂万実が一番可愛い人だよ。」






山崎くんの鼓動の速さが聴こえてくる…。




優しさが痛いほど伝わってきて、悲しみの涙だったのが山崎くんにキスされた時の夕日の涙色に変わってゆく……。





クラス中が唖然としている中、山崎くんはハッキリと私に伝えてくれた。






「本気で野呂を俺に惚れさせるから、これから覚悟しといて…!」









Fin.
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