可愛い人。
「マジ!?翔太それを早く言えよな!!」
わ…!
山崎くんを追うようにみんなついていっちゃった…!
お祭り騒ぎが嘘のようにそれはどんどん離れていき、私と対称的なところで山崎くんを中心に男の子達の笑い声が聞こえてくる。
その中にはたまに女の子の声も混じっていてとても楽しそう。
山崎くんも笑顔がこぼれていて、楽しそうで…。
「はぁ~~~。」
私は密かに長いため息をつくと、また新しいあみぐるみを作るために毛糸を取り出す。
…よかった、何も言われなくて。
みんなの意識が山崎くんにいってくれて安心…。
ホッとするのと同時にじめっとした感情が戻ってきた。
やっぱり私……,
山崎くん……苦手だな……。
“あの日”から私の中で山崎くんへのそんな感情が生まれてしまった…。
高校に入学してからというものの、私は相変わらず一人でいた。
友達を作りたいと思っていたけれど極度の人見知りとあがり症のため、入学初日から女の子のグループに入りそびれてしまったのだ…。
だから私の携帯のメモリーには家族と、小学校からの友達が2、3人いるだけで。
もちろんこの高校の人の名前は登録されていない。
でも、もともと一人には慣れているし、一人でいる時間は窮屈じゃないからまた元の生活が始まったのだと思えばなんてことないんだよね。
そう。そうして私は私なりに平和な時間を過ごしていたのだ。
切り取られた空間の中でゆっくりとした一人の時間…。
それでよかった。
あの言葉を聞くまでは。
生暖かい風がそのとき、少しだけ濡れていた目もとを優しく撫でていった…。