可愛い人。


「じゃあまたな、翔太!」


「おう!また人に当たるとマズイから、グランドでやれよ~~。」



でも、山崎くんがいなかったら私、確実に大怪我してたってことだよね……?!




そこでハタと思う。




さっきのワイシャツも誰かに引っ張られた感触も、あれって…。



ふいに山崎くんを見た。




見上げるほどの背の高さと、ピンでお洒落に止めてる黒髪に、耳に光るピアス。



そして男の子なのに、とってもいい香りがした。





私、いま山崎くんに……、




抱きしめられた……のかな?!!




そう直感した瞬間、私は周りを見渡してみる!



でもそこには山崎くん以外、他の人の姿は見当たらない。




それじゃ私を庇ってわざわざ助けてくれたのって……。





と、その時。




「はぁー…。」




!!!



え!?



ため息をついている!?



ど、どうしよう!?



これって私のせいだよね!?




とにかく助けてもらったお礼を言わなくちゃっ!!




「………あ………あの……助けて…くれて、」




“ありがとう。”



震える声でそう言おうしたとき、私に背を向けてスタスタと校舎の中へと入ってしまった!!





「あ…!ま、待って!」



いつもよりも声を張って彼を引き止めようとしたけれど、もうそこには影も形もなかった。




ざあっと木々の音が風にのって鳴るのをただ呆然としたなかで聞く。




それは今の私の胸のざわめきにとてもよく似ていた…。


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