平凡という至福
ハルちゃんのお母さん
私はハルちゃんのお母さんが大好きだ。
霧雨に降られながら自転車を漕ぐ私を見つけることがあると、遠くから走ってきて
「なーにやっとるだぁ。風邪引いちまうやろー。」
と言いながら、頭についた雨粒を払いながら撫でてくれる。
そしてハイタッチをしてから私の左手をギュッと握って、私が見えなくなるまで手を振ってくれるのだ。
ほんとにお母さんみたいにいい人なのだ。
玄関の扉を開けて、ただいまーのあとはちょっと大げさに
「よっこいしょ」
と言う。
買い物カゴをキッチンに置いて、今日の日付の書いた紐帯をはがす時が、理由もなく楽しい。
買ってきたものも冷蔵庫の中でどの位置に入れるか全て決まっている。
それをパズルみたいにはめていくのが、私のルール。