席順斜め後ろ
中学2年の7月15日。
ふわりと肌を撫でるのは、体温より暑いむわりとした空気で、蝉が先生の声をかき消すように鳴くため、授業などあってもないようなものだった。
優月は頬を刺すような日の光に紛れ込む紫外線を腹立たしく思いながら、ひたすら黒板の汚い文字をノートに写していた。
そんな時、
「ゆずー。」
「...なに。」
ノートに文字をひたすら写すこともせずただただぼーっとしていた奴に、話しかけられる筋合いは無いと言う意味を込めた視線を送ると
「オレ、転校するから☆」
夏休みを間近に控えたその日、隣の席だった誠矢はそんなことを言った。
「...は?」
「家の都合でねー。」
ニュアンス的に「オレ、今日の弁当自分で作ったんだ☆」的な感じの軽いびっくりを期待した言い方だったので、一瞬何を言っているのか理解出来なかった。