夏の思い出
夏の思い出
「ねぇ、遊馬、話があるんだけど」


中学校が夏休みにはいる前、なんだか今伝えなきゃいけない気がした。

だから玉砕覚悟で同級生の浪江遊馬(なみえゆうま)に告白することにした。

遊馬は幼なじみで小さいころからずっと一緒に居た。

友情が恋愛感情に変わったのはいつだったか分からない。

でも好きになってしまったものは仕方ない。

もしかしたら友達ですらいられなくなっちゃうかも知れない。

でも今言わなきゃ絶対後悔すると思った。

帰り道寄り道して二人で公園に寄ってベンチに座った。

世間話なんてしててもしょうがない。

「あ、あのね!」
  
「なに?珍しいよね春霞が話なんて」

春霞っていうのは私の名前。穂波春霞(ほなみはるか)って言うんだ私。

好きじゃないんだけどねこの名前は。

「好きなんだ!遊馬のこと、恋愛的な意味で…」

「え?」

遊馬、驚いてるそりゃあそうだよね。

「ご、ごめん!急に、でも、できたらこれからも友達でいてほしいな」

必死に取り繕う。

泣かないように。

「やだよ」

「ぁ、そうだよね。こんな奴と友達とかやだよね。ごめんね」

「ちがうよ、ずっと好きだった奴にそんなこと言われて友達で我慢できるわけ無いじゃん」

「え…」

どういうこと…?

「あぁ失敗した、絶対俺から告ろうと思ってたのになぁ、先越されちゃったよ、ねぇ、春霞俺もずっと好きだったよ。後出しで悪いけど、付き合ってくれませんか?」


ほんとに?

ほんとに、私ことすき?

「あ、当たり前だよ!絶対振られると思ってたから夢みたい。」

「俺も、春霞が告白してくれると思ってなかったから夢みたいだよ。」

「改めてよろしくね?」

「勿論!恋人だな!」

「嬉しい、有り難う遊馬」

「チュッ」

え?えー?ほっぺたにキスされた。

「口にしたいんだけど駄目?」

駄目な訳ないよ!

「い、いいよ」

私より十センチくらい高い身長の遊馬が少し背を屈めて僕に顔を近づけてくる。

「っ…」

こういうときって目つむったほうがいいんだよね?

目を閉じて身を任せる。

優しく抱きしめられて遊馬の体温を感じる。

あったかい。

触れるだけの優しい口づけ。

私はこれが堪らなく幸福だった。

幸せすぎて、嬉しすぎて涙が溢れてきた。

遊馬が慌てはじめた。

「えっ?え?どうした?やっぱり嫌だった?」

「違うよ、幸せ過ぎて…」

「ふふっ、俺もスゲー幸せ。」







この時まだ私は気付いていなかった。

幸せの代償に…
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