臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「この顔やこの顔じゃ恋愛対象外か?」

自分と孝介さんを、交互に指差す社長に呆れた視線を向ける。

「こんなとこでする話題でもないですよね?」

グラスを傾けながら言うと、社長は鼻で笑ってから孝介さんと話始めた。


……従兄同士は仲がいいんだね。

うん。それはそれでいいよね~。

なんて言うか……随分、構われるようになった気がするなぁ、私も。

基本的に社長は、どちらかって言うと気のいい人なんだろうなぁ。

グラスを置いて、ふっと回りをみると麻百合さんは副社長の傍らで微笑んでいる。

チーム大和撫子は、デザートのテーブルに移動しているみたい。

華やかでな世界だなって思う。だからどうしたって気もするんだけどね。

少しくらい、離れても大丈夫かな。
さすがの私も、こんな中では寛げないし。

社長は孝介さんと話しているから大丈夫……だよね。

まさか“化粧室に行きたいです”とは、男性の社長には言いにくい。

こっそり会場を抜け出して、お手洗いを済ませて、手を洗いながら鏡を眺める。


……本当に、どこのお嬢さんだよ、この格好。

だけど“武装”という言葉はよくわかる。

いつもみたいな“私は秘書です”的な格好なら、会場では浮いちゃっていただろうし、あの大和撫子には歯牙にもかけなかったかも。

着飾るのは“女の武装”だよね。

「よし。気合い入れ直そう!」

あまり長い間離れているわけにも行かないから、またそっと会場に戻ろうとして……。
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