臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
とりあえず、ファイルをめくっている社長の前にコーヒーを置くと、一緒にクッキーも添えた。

「ありがとう……。お前は、午前中だと必ず何かつけてくるんだな」

クッキーに気がついた彼が顔を上げる。

「お昼近いですし。適度な糖分も必要かと思いまして」

自分のデスクにもコーヒーを置いて、トレイを戻しにいく途中……小さく笑われた。

「……なんですか?」

「うん。お前は甲斐甲斐しい、と思ってな」

「……ありがとうございます」

それからしばらく書類の清書をしていたら、コーヒーを飲み終えた社長がファイルを閉じる音がして彼を見る。

「美和。そろそろ昼にしよう。お前は何が食いたい?」

……ランチに誘われることも増えてきたなあ。

お昼ご飯を忘れるよりはいいんだけど、少し困る。

「最近、どうしてランチに誘うんですか?」

「一緒に食いたいからだろ。やっぱり一人で食べるのは味気ないから」

「……そんなものですか」

「うん。それに美和。お前はわかってなさすぎるぞ」

あなたがわからなさ過ぎるんですよ。

「昨日はお蕎麦でしたから、今日はご飯ものにしましょうか?」

「わかった。場所は任せる」

ファイルを持って執務室に向かった社長を見送り、私は首を傾げながら二つのコーヒーカップを洗った。




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