臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
社長秘書室は、いろいろな設備に直接行けるように設定してある。

その一つが専用の給湯室だ。

観葉植物の陰に隠されるように配置された入口から入ると、広さ2畳くらいの給湯室に直結している。
そこには小さな冷蔵庫と食器棚。食器棚の中には来客用の、一組何万の食器もあるから怖いけど、その脇を抜けて奥に向かうとコンロと小さなシンクがあった。

緑茶や紅茶の用意はもちろんコーヒーメーカーもあるんだけど、細い注ぎ口のケトルを見つめた瞬間に、キラキラ目を輝かせながら『ドリッパーも持ってきていいですか』と聞いて、設備説明してくれていた羽柴さんの目を丸くさせたことは記憶に新しい。

だってさ、なんかとってもいいコーヒー豆あるのに、それをエイッとコーヒーメーカーにお任せしちゃうのはもったいない気がしたんだもん。


どうせ飲むなら、できるだけ美味しいコーヒー飲みたいじゃない。


でも、社長……美味しいって思ってくれてるんだ。

何も言わないからどうなんだろうと思っていたけど、なんか嬉しいな。

そう考えながらコーヒーの用意をする。
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