臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「ところでさぁ……美和。あれって社長じゃない?」

「ひゃ?」

変な返事をして、詩織の指差す方を振り向くと、目の前には見覚えのあるネクタイ。

うん。このネクタイの結びかたと色にはとっても見覚えがある。

そろっと視線を上げると、冷たい視線の社長とバッチリ目が合ってしまった。


「あれ? 社長。こんな所でどうしたんですか?」

「お前こそどうしたんだ」

「どうしたも何も、詩織と飲んでいたんですけど……社長」

……と、視線を移すと、飯村孝介さんが苦笑している。

「ああ。飯村さぁん。こんばんは~」

「はい。こんばんは」

「もしかして、社長たちも飲んでいたんですかぁ?」

社長はへらへら笑っている私を見下ろし、それから詩織を見て……溜め息をついた。

「君たちほどは飲んでいないな。全く何をやっているんだ」

「飲んでいただけです。じゃあ、社長。お疲れさまでぇす」

退散退散。社長の冷たい目は怒っている証拠だし。

何で怒っているか知らないけど、逃げるが勝ちって言うのは有名な言葉だ。


そう思ったのに腕を掴まれて、引き戻されてボスンと受け止められた。

「逃げんじゃねえ。小娘」

「いや。逃げますよ、そんなおっかない顔した人見たら……って言いますか、今ので目が……」

まわったよ~。
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