臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「それで、気分はどうだ?」

「ちょっとめまいがしただけで、気分は平気ですよ~」

「それならいいが」

社長はそう言って、崩れていた私の体勢を当然のように立て直す。


……一応、私は女性だってわかっているんだろうか。

「女の身体に、簡単に触らないで下さ~い」

「……さすがに、そこまで踏み込んで触れているわけじゃない」

「はい?」

踏み込んで触るってどういうこと?

ポカンとする私に、あくまで真面目な無表情の社長。


「美和に言っても無駄ですよ」

ポツリと呟かれた詩織の言葉に、孝介さんが吹き出した。


うん。何となく失礼な事を言われた気がする。

それでも、社長は何も言わずに私の手を取り、歩き始めたからついていく。

必然的に、私に掴まえられている詩織もついてきたし、孝介さんもついてきた。

「……ったく、お前は酒に強くないと言うか……弱いんだな。少し気を付けた方がいい」

「それは大丈夫ですよ~。こんなに飲むのも久しぶりですし、飲みに行くなんて会社の集まり以外じゃ詩織としか行かないし」

「女が二人で酔っぱらっていたら、男から見るとカモにしかなんねぇよ」

「それも大丈夫ですよね~。私は地味クイーンらしいですからぁ」

しかも、酔っぱらい女子なんて面倒だろうって話だよ。

そんなのワザワザ“お世話したいです”なんて男子はいないよ~。


そう思っていたら、社長が立ち止まり、じっと私を見下ろした。

そして不思議そうに首を傾げる。


「そんなに可愛いのに?」
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