臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます！
「女性を追い詰めるもんじゃないですよ。でも、ちょうど良かったわぁ。しじみのお味噌汁なんですよ。とにかく上がって上がって、お酒が過ぎたときには、しじみの味噌汁が一番です」

ニッコリ微笑んでポンポンとスリッパを叩く勝子さんに、社長が苦笑して肩を竦める。

そうして二人で小杉さんのお宅にお邪魔して、鼻唄でも歌い出しそうな勝子さんに案内されて居間に通された。


畳のお部屋に用意されていたのは、人数分の純和風朝ご飯。

香ばしく焼けた焼き魚としじみのお味噌汁、ふっくら巻かれた卵焼きに白菜のお漬け物。

ピカピカ白米ご飯が立っている。


「朝ごはん……！　お味噌汁！」

目をキラキラさせていたら、社長が不思議そうな顔で振り返り、ギョッとして身を反らした。

「何でお前は涙目なんだよ」

「だって和食は久しぶりなんですもん。家に帰って一人じゃ、ちゃんとしたモノはなかなか作れないし」

「……お前と一緒に、昼はけっこう和食を食ったよな？」

「お座敷で食べるお蕎麦や、日本庭園見えるホテルで創作懐石とか、廻らないお寿司は日常じゃないんですよ！」

くわっと目を見開いて詰め寄ると、社長は両手を上げて、笑っている小杉さんと勝子さんに視線で助けを求める。

「いや……やっぱり女を誘うなら、それなりの店じゃないと駄目じゃないのか？」

「どこの女と同一視してんですか、ランチタイムは休憩時間なんですよ！　それなのに緊張しいられた私の身にもなってください！」

「お前が緊張するのか？」

……うん。ぶっ叩いていいかな。
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