臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
「暑いです……」

「うん。顔が赤いのはきっと暑さのせいなんだろうな?」

違うとは思うけど。

「そういうことにしておいた方が、世の中うまくいくこともあります」

「今日は無礼講でいいんじゃないか?」

「え。無礼講でいいんですか?」

「お前はだいたいが無礼だろ」

「違います!」

叫んだとたん、徳さんに爆笑された。

「そうかそうか。兄さんは西澤ちゃんの上司か。楽しい部下を持ったら大変だねぇ」

「本当です。あ。俺はビールでお願いします」

「ジョッキと中瓶どっちがいい?」

聞かれた社長は一瞬キョトンとして、それから破顔した。

「……それならジョッキでお願いします」

何故か嬉しそうに頼んで、本当に楽しそうに私を見る。

どこか伸び伸びしてない?

そりゃ、いつも人前以外は伸び伸びしてる気もするけど、それ以上にネクタイを外し、腕捲りまでしてニヤニヤしてる。

ああ、そっか。
ここじゃ“東野社長”でいなくていいのか。

確かに人の目もあるけど、普段、連れて行ってくれるお店じゃ、結果として“東野社長”としていることに変わりないもんね。

確かに“東野社長”相手に、ビールはジョッキがいいのかって聞いてくるのは珍しいかも。

当然のように、瓶ビールが出てきて私がお酌するもんなぁ。

これはこれで息抜きにはいいのか。
< 151 / 255 >

この作品をシェア

pagetop