臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
そうして、半分眠ってぐったりしている社長宅に着くと、今度は運転手さんに手伝って貰って玄関まで彼を支えながら歩く。

「中まで運びますか?」

愛想のいい運転手さんはそう言ってくれたけど、さすがにそれは申し訳ないから辞退して帰って貰い、社長の腕をトントンと叩いた。

「着きましたよ。鍵出して下さい。家に入りますよ~」

一瞬、垣根の向こうの小杉さんの家を視界の隅に入れていたけど、助けを呼ぶのも申し訳ない時間だしなぁ。

考えていたら、ジャケットのポケットから鍵を取りだし、社長が鍵を開けてくれた。

「悪いな……」

「大丈夫です。泥酔男子は弟で慣れてます」

「俺は弟じゃ無いんだがな」

社長は低く呟いて私から離れて行くと、ふらっと中に入ってパチリとライトを付けた。

どうしようか? でも、さすがにちょっと放っておくのも気が引ける。

遅れて追って行くとすでに社長の姿は無くて、乱雑に脱いだ靴とジャケットが玄関に落ちていた。

さすがにジャケットは持っていけ。

考えつつもそれを拾って、あたりを見回す。

吹き抜けの玄関。目の前に二階に上がる階段。左右には木製のドア。

右側のドアが半開きで明るいから、社長はこっちかな?

「お邪魔します」

一応の防犯に、ドアの鍵を閉めてから小さな声で呟いて勝手に上がり込むと、自分のパンプスと社長の靴をきちんと並べなおす。

右側の部屋はリビングらしい。
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