臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
動けないのはわかった。それならここで落ち着ける方法を探そう。

せめて肘掛けの間に何かクッションでも置けば、頭は変な角度にはならないだろう。それに何か上にかけるもの。

一番分かりやすいのは寝室に行くことなんだろうけど、さすがにご忠告を頂いたばかりで“独り暮らしの男の寝室”に踏み込む勇気はない。

たぶん、あっちはキッチンでしょう?

と、すると、正面の部屋はなんだろう。

ちょっと覗いてみると書斎だった。

大きな格子窓の正面に大きなデスク。壁に天井までの高さの大きな書棚が埋め込まれ、並べられているのは辞典みたいな洋書に、経済関連の本。

その椅子にふかふかのクッションと膝掛けを見つけた。

それを持ってリビングに戻ると、困ったような社長と目が合う。

「何をしているんだ?」

「巣作りです」

「巣……?」

「失礼しま~す」

社長の頭を少しだけ持ち上げて、肘掛けと背中の間にクッションを突っ込むと、膝掛けをふわりと着せかける。

それからキッチンに向かうと、大きな銀色の冷蔵庫に突進した。

確か頭冷やすと少しはいいはず。そして、暗いところで安静に。

……だった気がする。

まずはビニール袋に水を張り、製氷機から氷を取っていれる。

さすが社長のうちの冷蔵庫、勝手に氷ができる冷蔵庫は便利だ。

破れたら大惨事だから、ビニールを三重にしてギッチリと口を縛る。
それをハンカチで包んで、簡易氷嚢の出来上がり。

リビングに戻ると、電気のスイッチを見つけて社長を振り返る。

「電気を消しますよ?」

一瞬、目を丸くした社長の顔が見えたけど、構わずに電気を消して即席氷嚢をおでこに乗せた。

「う……」

「あ。冷たかったですか? でも冷やした方がいいかと思って」

「美和。悪い……」

「はい?」

「俺は電気がついていないと一人で眠れないんだ」

それはそれは悲しそうな呟きが返ってきた。









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