臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
私が直接役員たちに内線を……してもいいんだろうけど、出来るはずもなく、結果、秘書を通して臨時の役員会議を伝えることになる。

そりゃあ……ね。

仮にも役員秘書がトップシークレットな話を誰彼構わずベラベラと話すはずがないけれど……。

用心に越したことはないって言うし。

実は秘書課の人間は『ここだけの話』が得意なのは知ってるもんね。

事が事だけに、事実を知っている人間は、少なければ少ないほどいいのでしょう?

これは社長が教えてくれたことじゃないか。

事実を知っている人が少なければ、まわりにバレる可能性もないものね。

持っていた書類の角を無意味に揃えると、それを念のために袖机にしまってから鍵をかける。

それから会長にお知らせする為に、一つ上の階の会長室に向かった。

実は会長室って行ったことがないんだよね。

そもそも会長は、いつの間にか出社している。

たまにお昼頃、秘書課の前を通る姿を見るくらいで、秘書も必要ないって常時ついている人間もいないし。

社用で見かける時は、室長の羽柴さんがついているから……。

エレベーターもついていないし、社長室から出てすぐのところにある階段を上がって行ったら会長室がある。

それくらいの知識しかない。

用もなければいかない場所、それが会長室だったりするし。

階段を上りきり、シンプルな鉄扉のドアを開け……。


眩しいくらいの陽の光に思わず目を細め、それから目の前に広がる光景に頭の中が空白になった。
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