臨時社長秘書は今日も巻き込まれてます!
そうやって考えると、春日井さんの言いふらしは有効かな。

今はちょっと、気をつけないといけない事だらけなんだけど、私と社長の噂話は状況としては感謝すべき?

私が難しい顔をしていただけなら“不仲”までは、発展しないかもしれないし、別の憶測も飛んじゃうかもしれないけど……。

もともと今回の一件は噂を最大限利用したようなものだし、それを再利用してみようか。

ふむふむ考えながら顔を上げたら、デスクに座った社長の無表情が見えた。

「失礼しました。業務に戻ります」

慌てて立ち上がると、彼はどこか面白くなさそうに頷く。

「ああ。それからこれ。まとめておいてくれ」

仕事中の社長は、いつも無表情。
……この顔も私は好きだな。

頭の片隅でそんな事を思いつつ、差し出された黒いファイルを受け取って、それからニッコリと微笑んだ。









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